紅の平成 ☆ きもの暮らし

特別じゃないふだんの着物とキモノにまつわるあれこれ

着付け師という仕事

こんにちは! 紅です。

暑い日が続きますね。

季節外れではありますが、以前、着付けさせていただいた振袖のお嬢さんの写真を。

青い帯締めを花の形に結びました。

 

私は着付けのレッスンもしますし、出張着付けや成人式、婚礼の仕事もしています。

 

きものを着る人がめっきり少なくなったこの平成の日本では、「着付け師」の仕事もあんまりないのが現状です。

 

例えば婚礼着付けの場合は年間で季節の良い土日祝日に仕事が集中します。忙しい日って年間にゆびおり数えるほどしかありません。でも、繁忙期を乗り切るために会社は多くのスタッフを抱えて(雇っているのではありません)、人を駒のようにやりくりしてしのいでいます。

ホテルや婚礼会場と契約した美容室とか、婚礼のお支度を請け負っている会社に所属して婚礼会場に派遣されている着付け師が多いのではないでしょうか。

雇用形態ははっきりしていなくて「請負(たぶん)」のような感じです。毎週仕事が来る保証はなく「お客様がいる時だけ仕事が来る」・・・例えば翌日仕事が入っていても前日にお客様がキャンセルを入れたら翌日の出勤は無くなるという会社にとって都合の良い形です。これではご飯をは食べられるほど仕事できません。美容室は少しマシでアルバイト採用しているところもあるようです。

 

華やかな披露宴会場とは裏腹にこの業界は、かなりシビアな職場です。

各式場ではお客獲得競争で商品の価格を抑えるため経費を削ります。会社が大変なのも理解できます。

しかし、着物の仕事が少ない中で、着物をあつかえる仕事は人気が高く、「夫が稼いでくれている、年金がもらえる主婦」のお小遣い稼ぎには向いているので、伝統が出来ているのだと思います。仕事としては成長していないのが残念な業界です。

 

着物文化の衰退はこんなところにも原因があるのだと思います。

 

私が、婚礼着付けで働きだしたのは10年以上前です。

仕事をしてびっくりしたことは、結婚式に列席するために「着物を着せて」とお見えになる日本女性たちが「着物のことをほとんど知らない」という事実と、「ほとんど着物を着ない」ということです。

 

足袋がはけない。裾除けがつけられないなんて当たり前のできごとでした。

 

しばらく着物を着る機会がなかったのか、着物を入れたバッグが年を経て劣化しまっていてパラパラとビニールが剥がれ落ちて・・・その他にも草履の底がはがれたり、草履の紐の裏から消しゴムのカスみたいにビニールがはがれたり・・・ひどい時には広げた着物から小さな生き物が・・・

ティッシュを掴んで生き物に「ゴメン!」と心で呟きながら丸めてゴミ箱にポイッと・・・様々な経験を経たおかげで、大抵のことには驚かず対処することができるようになりました。

 

仕事をしてもう一つびっくりしたことは、「着付け師」さんたちが「着物を着られない」という事実です。「着物は着せても、着物は着ない」のです。人は必要なことしか上達しないので仕事で求めらること以外は成長しないのは当然ですが。そのせいだと思うのですがほとんどの着付け師さんは紐をきつく締めすぎて「着物は苦しい」と感じてしまうお客様をどんどん作り出しています。

着崩れすると「クレーム」になりますが、「苦しい」のは本人のせいだということになるようです。

 

婚礼会場の中は四季がないので、真夏でも「袷」という冬場の着物を着る方が多いです。

というわけで着付け師さんたちは、季節の着物の移り変わりも知りませんし、婚礼に使わない半幅帯の結び方も知りませんし、着物の文様も・・・紬やウールもわからない方が多いです。

 

着物を着る人と、着物を着せる人は「違うんだ」というのはびっくりでしたし大きな発見でした。

 

そんなわけで、私は「楽で綺麗な着付け」を目指して「着物を着てくださる方が増えるといいなあ!」と願って活動しています。

 

 

 

 

 

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